突然ですが、
あなたにはこれだけは譲れない!
というような強いこだわりがありますか?
他人からしたらどうでもいいことだけど、
そのことをトコトンまで突き詰めて、
究極の自己満足に浸ることに人生を懸ける、
そんな人間たちを描かせたら、
山田芳裕先生に並ぶものはいないでしょう。
今回は大人気連載中の【へうげもの】が物語の佳境を迎えている、
山田芳裕先生について紹介していきます。
変顔ともとれる、
異常なまでに感情を爆発させたようなキャラクターの表情と、
独自の価値観を持つキャラクターが特徴的で、
山田芳裕先生の作品の神髄ともいえます。
人間が生きていくうえで道標にもなる、
「こだわり」をテーマにした作品を多く手掛けてきた為か、
山田芳裕先生を「天才」と評価する読者は多いです。
そんな山田芳裕先生の天才性について、
各作品を見ることで調べてみたので、
チェックしてみましょう♪
(主な内容)
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※2017年11月30日
【へうげもの】連載終了に関する追記あり
山田芳裕 プロフィール
山田芳裕 プロフィール | |
ペンネーム | 山田芳裕 (やまだよしひろ) |
本名 | 山田芳裕 (やまだよしひろ) |
生年月日 | 1968年1月7日 |
血液型 | ― |
身長 | ― |
学歴 |
|
出身 | 新潟県新潟市出身 |
デビュー作 | 大正野郎 (1987年「モーニング」) |
主な作品 | ≪連載作品≫
≪短編集≫
|
受賞歴 | 【へうげもの】
|
※2017年10月現在
山田芳裕先生といえば、
キャラクターたちが見せる感情豊かな表情が非常に特徴的ですが、
この独特の画風や漫画表現はどうやって身についたのか、
気になりませんか?
山田芳裕先生の漫画家としてのルーツを調べようと、
プロフィールを見ていましたが、
そこで面白いことに気付きました。
山田芳裕先生の出身地は新潟県なんですが、
新潟県って多くの漫画家を輩出しているんですよね!
山田芳裕先生以外にも、
名だたるBIGネームが並んでいます。
もちろん上記に挙がっていない漫画家もたくさんいます。
なんでこんなに新潟出身の漫画家が多いのか?
個人的に考えてみたのですが、
豪雪地帯であることが関係しているのかなと・・・
(あくまで想像ですが)
冬は雪で覆われて自然と家の中にいることが多くなりますよね?
なので、
その時間を漫画を読んだり書いたりする人が多いのでは?
そう考えたのですが・・・
どうでしょうか^^;?
まぁ新潟出身だからといって、
漫画家としての才能に恵まれるという訳ではないですが、
しかし厳しい環境に負けずに生き抜くうえで、
我慢強さと勤勉さが、
新潟生まれの人には自然と身についているのでは?
というところから、
手間暇のかかる漫画の制作工程をこなすのに、
向いている方が多いのかなという気がしました。
それにしても、
新潟出身の漫画家だけの集まりとかあるんでしょうか?
そんな集まりとかがあるなら、
こっそり覗いてみたい気がしますw
だいぶ話が逸れてしまいましたが、
山田芳裕先生の作品を読んでいて思ったのは、
キャラクターの表情や見開きを利用した、
ダイナミックで独特なコマ割りなどは、
オリジナリティあふれる漫画的表現が使われていますが、
1コマ1コマに描かれるキャラクターたちを捉えるアングルや、
カメラワークなどに関しては、
実写映画を参考にしたような演出が窺えます。
漫画的表現と映画のカメラワークを意識したような描写の融合こそが、
山田芳裕先生の培った独自の技術で、
漫画の天才と言わしめる所以のひとつなんでしょうね。
そういえば山田芳裕先生といえば、
「三国志大戦」「戦国大戦」といったキーワードと一緒に、
検索をかけられることが多いんですが、
その理由は、
カードゲーム「三国志大戦」「戦国大戦」で、
数名のキャラクターのイラストを手掛けているからなんですね。
山田芳裕先生は漫画だけでなく、
そういったイラストのお仕事も手掛けているんですね!
さてお次は、
一番の代表作である【へうげもの】について、
語ってみようと思います。
山田芳裕の代表作【へうげもの】とは?
ここからは山田芳裕先生の最も有名な代表作である、
【へうげもの】について語っていきます。
へうげもの(1) (KCデラックス) [ 山田芳裕 ]
「そもそも【へうげもの】って何?」
と思う人のために説明すると、
「へうげ」=「ひょうげる」を指していて、
「おどける」とか「ふざける」といった意味を持っています。
このタイトルは主人公である古田織部を一言で表したもので、
本作を読んだらこの一言以外にしっくりくるものはないと思えるほどに、
ピッタリな言葉なんです。
まぁフィクションを織り交ぜた作品なので、
実際の織部さんとはかけはなれているかもしれませんが・・・。
本作では主人公として、
日本史の授業でも出てこない、
古田織部という人物にスポットを当てています。
こんなマイナーな武将にスポットを当てて何が面白いんだ!
そう思う人もいるでしょう。
しかしそこは山田芳裕先生が目を付けただけあって、
かなり織部さんの個性というか、
ここまで行くと変態性と言ってもいいくらいの、
「こだわり」が描かれます。
そのこだわりというのが、「数寄を極める」というもの。
これだけ聞くと非常に格好良く聞こえますが、
実際に山田芳裕先生が描く織部さんを見てみると・・・、
カッコよさとはかけ離れた、
骨董品への並々ならぬ「愛」と「執着」、
「物欲」にまみれながらも主君に仕えています。
主君に仕えるといっても、
我欲を満たす為に主君にウソの報告をしたり、
戦場でみつけた名物をちょろまかしたりと、
小賢しい悪知恵を働かせるところに小者感が滲み出ているんです。
これはまるで、
出張でインターネットカフェに1泊1500円で宿泊したのに、
請求書の金額を5000円に改竄して経理に提出する、
不良サラリーマンと同じです(笑)
この小者感こそが主人公への共感を得る最たる理由で、
本作が人気を得た理由のひとつなのかもしれません。
他にも本作の魅力となっているのが、
実在する名物や、
資料であったとされている名物を登場させて、
独特の「はにゃーん」や「のぺーん」といった擬音で、
名物の持つ雰囲気や質感などを表現しているところにあるのでしょう。
この子供が思いつきで口にしたような一言が、
本作では名物を抽象的ながらも絶妙にマッチしているんです。
同じ骨董品や美術品を扱った作品に、
細野不二彦先生の【ギャラリーフェイク】などがありますが、
こちらは実際の美術評論に忠実な蘊蓄が満載で、
知識量で勝負している感じです。
このように美術品や骨董品に対するアプローチの仕方が違う点も、
この作品が他のアートを扱った作品と一線を画す所以といえます。
そして最後に歴史作品としても非常に優れている点が、
魅力のひとつとしてあげられます。
物語をより面白くするためにフィクション要素が非常に強いのですが、
それぞれのキャラクターが己の美意識にしたがって、
死を選んだり無様に生き延びたりする人間模様が描かれているんです。
物欲や性欲にまみれ、
権力を欲しながらも泥臭く生きるキャラクターたちの人間臭さが感じられる、
そういったところが、
この作品が人気ある理由のひとつとも言えそうです。
特に歴史上の人物として超有名な3人の武将のイメージと、
作中で割り当てられている美的センスがピッタリなんです。
- 織田信長 最先端のおしゃれ・上品な派手さ 好きな色:レッド&ブラック
- 豊臣秀吉 美的センスはない・下品な派手さ 好きな色:ゴールド
- 徳川家康 質素倹約・見た目は二の次 好きな色:そんなものはない
このように各武将の特徴を上手く捉えた設定がなされていて、
歴史ファンが読んでも楽しめます。
最後に本作でも存分に発揮されている感情丸出しの表情を、
紹介して締めようと思います。
出典:【へうげもの】1巻 第5席 天界への階段
どうでしょうか?
織部(この時はまだ織部を名乗る前で左介)が名物を目の前に、
主君である織田信長がいる手前、
欲しいのを我慢して苦悩しているのが表情を見ただけでわかります!
※【へうげもの】連載終了に関する追記※
古田織部の数寄を極める物語を描いた【へうげもの】が、
2017年11月30日発売の「モーニング」53号で遂に完結しました。
織田信長に仕えたことから始まり、
千利休に茶の湯が何たるかを学んだ古田織部は、
豊臣秀吉の選任の茶人であり利休亡き後に、
唯一信頼のおける家臣となります。
そして質素倹約を信条として、
娯楽や数寄といった趣味に興味を示さない徳川家康とは、
分かり合えず対立することになりました。
3人もの天下人のもとでそれぞれの価値観を、
近くで見てきた古田織部はそれぞれに多少影響されることはあっても、
自分の美意識を貫き通した男として描かれています。
時には名物の美しさに目がくらんでチョンボをしたり、
股間の大金時をムズムズさせるといった、
ふざけた一面を見せる美に魅せられた男の生き様はまさに!
「へうげもの」と呼ばずして、
なんと言えようか。
最終回では、
古田織部と徳川家康のそれぞれの価値観のぶつかりあいでは、
結局分かり合えなかった2人が、
古田織部の自決によって決着がつこうとします。
さて数寄の探究者・古田織部が死の間際に残す一言とは一体・・・?
そして、
古田織部の死が徳川家康の後世にどう影響するのか、
その目に焼き付けましょう!
また最終回で編集者の煽り文では、
山田芳裕先生の新作を期待させる「近日登場予定にて候」の文字があるので、
【へうげもの】ロスで寂しい思いをしている、
そこのあなたもご安心ください。
まだ山田芳裕先生の新作が読めるとのことなので、
次回作に期待しましょう。
山田芳裕先生、
12年間の長期連載お疲れさまでした!
*:・’゜☆’ .:*:・’゜☆’ .:*:・’゜☆’ .:*:・☆
それでは最後に、
【へうげもの】以外のおススメ作品をいくつか紹介します。
山田芳裕、おススメの作品
ここからは、
【へうげもの】以外のおススメ作品を3つ紹介します。
まずひとつ目は、
【デカスロン】です。
デカスロン 1 (小学館文庫 やB 11)
この作品は陸上の種目のひとつで、
「10種競技」をテーマに扱っています。
ちなみに「10種競技」とは何か?簡単に説明すると、
- 100m走
- 走り幅跳び
- 砲丸投げ
- 走り高跳び
- 400m走
- 110mハードル
- 円盤投げ
- 棒高跳び
- やり投げ
- 1500m走
以上の10種目で出した結果によって、
細かく点数が決められていて、
この10個の総合得点を競い合う競技です。
「スプリント・スタミナ・投力・跳躍力」といった総ての能力で、
高水準を求められる最も超人に近い選手たちが競い合う競技ともいえます。
日本ではタレントの武井壮さんが元競技者の中では最も有名ですね。
スポーツが題材なので見開き1ページ丸ごと使った、
ダイナミックなアクションシーンは、
山田芳裕先生ならではの味が出ています。
個人的には山田芳裕先生の画風を活かすんだったら、
動きのあるアクションものやスポーツものの方が、
向いているようにも思います。
とにかく物語全体を通して、
主人公がポジティブで明るく目標に一直線に進んでいくさまが、
見ていて爽快ですよ!
浦沢直樹先生の【YAWARA!】に近い爽やかさと、
自然と応援したくなる主人公のキャラクター性が魅力です。
出典:【デカスロン】1巻 10話 400mの死闘
この画像を見ただけでも、
それぞれのキャラクターが協議に懸ける熱さと、
山田芳裕先生の天才性が伝わると思います。
とにかくおススメの作品なので、
手に取ってほしいです!
続いてのおススメは【しわあせ】です。
しわあせ 1 (パーティコミックス)
よく「しあわせ」と勘違いされる方が多いので、
タイトルを間違わないように注意が必要です^^;
この作品は2033年の未来の日本を舞台にした作品ですが、
驚くべきことに、
この舞台となる2033年の日本には、
怒りという感情を排除して、
国民全員の精神を安定させた世界が描かれます。
2017年現在の日本でも感情をコントロールして、
怒りを抑えてできる限り平坦で潤滑な人付き合いができることを、
コミュニケーション能力が高いとしているので、
この作品のような未来が現実になるかもしれません。
フィクションがまさに現実になりかけているのです。
これって・・・正直恐くないですか?
というか、
国民全員に怒りの感情がないって、
そんなの生きてて面白いんでしょうか?
人間は怒りという感情も含めて、
喜怒哀楽があるからこそ言葉選びも難しいし、
自己主張の仕方にもそれぞれの個性が出ておもしろい。
そんなことを、
主人公のファンキーなおじいさんが教えてくれる作品です。
とても考えさせられる作品なので、
人間関係に悩んでいる人や、
自分の意見を言えずに悶々とした日々を送っている人は、
読んでみるとスカッとしますよ!
3つ目のおススメは、
デビュー作の【大正野郎】です。
山田芳裕傑作集 (1) (小学館文庫)
この作品は、
大正ロマンと芥川龍之介をこよなく愛する、
レトロスタイルを貫く学生の日常を描いた作品です。
主人公の平徹(たいらてつ)は大正ロマンに憧れるあまり、
言葉遣いも服装も大正レトロなスタイルで周囲からは浮いているけど、
自分の好きなものに自信をもって、
他人からどう思われようと我を貫き通す姿は、
ちょっぴり憧れを持ってしまうくらいに、
気持ちよく描かれています。
この作品全体を通じて描かれる「美意識」のこだわりは、
【へうげもの】にもつながるものを感じます。
山田芳裕先生の描く人間の「こだわり」の原点を知る上でも、
是非読んで欲しい作品です。
ここまで長く語ってきましたが、
山田芳裕先生の天才性について少しでも伝わったでしょうか?
人間ひとり一人が持つ「こだわり」があるから、
争いも生まれるし、
分かち合えた時の喜びは何倍にもなる。
人それぞれの「こだわり」を共有しあうことこそが、
人生最大の娯楽なのだと各作品から伝わってきますね!
まぁ正直作品を読んでいる時は、
面白くて夢中になって読んでるので、
そんな小難しいこと考えていませんが・・・w
これからも人間臭さ溢れるキャラクターを描いてくれる、
山田芳裕先生を応援していこうと思います。